葬儀の基礎知識 白木膳・枕飯・枕団子

2020.04.03 カテゴリ | 葬儀の基礎知識

仏式のご葬儀の場合、故人様の枕元には宗派に合わせて枕飾りを行い、

枕飯・枕団子をお供えする白木膳をご用意します。

(浄土真宗を除く)

 

 

《白木膳》

白木膳・枕飯・枕団子は全国的にみられる風習ですが、

お供えする内容や呼び方は様々です。

ここでは、静岡県西部の遠州地方で一般的にみられる

白木膳の準備を解説します。

 

まず、白木膳の名前の通り、白木でできたお供え用の台を用意します。

脚がついていて少しかさ上げされた小さくて四角い専用の台です。

ここに、

ご飯を山盛りにした茶碗

塩と味噌を盛った小皿

枕団子(白玉粉で作ったお団子)4つを盛った小皿

を乗せて、故人の枕元にお供えします。

 

お箸はご飯に立てることが多いですが、お寺様によっては箸を立てない

あるいは儀式の中でお寺様がご飯に立てることもあります。

茶碗・箸は用意できるのであれば、

故人様が生前お食事の時に使っていたものを用います。

(無い場合はまっ白い茶碗と割箸を用います)

 

 

《意味合い・由来》

白木膳の枕飯や枕団子の意味合いには諸説ありますが、

「この世で故人様に差し上げる最後のご飯」というのが一般的な考えです。

 

元々、枕飯は一膳飯と言われ、嫁入りや引っ越しなど、

「旅立ってもうここには戻らない」という場面で出されていました。

「同じ釜の飯」という言葉が示す通り、食事を共にすることは

同じ共同体の構成員として認識している、そして運命を共にしているという意味があり、

とても強いつながりがある者同士であることを表していました。

 

それが転じて、亡くなられた方はもう共に食事をする存在ではなくなった、

つまり共同体の一員ではなくなったために、

最後に共にするご飯という意味で一膳飯=枕飯が供えられました。

 

最後の食事という点では火葬場で出される食事を「食い別れ」と呼ぶこともありますが、

こちらも同じような意味合いを持っていると考えられます。

 

また、古来の葬送の風習である「殯(もがり)」においても

故人様に専用の食事を用意しており、この名残でもあると思われます。

 

また、ご飯を山盛りに盛る、箸を立てるなどの行為は

普段の食事においてはマナー違反とされています。

葬儀では普段とは違うことをあえてする「逆さごと」というものがありますが、

枕飯もいつもはマナー違反であることをわざとすることで

葬儀の儀式の一つである点を表していると言えます。

 

塩・味噌はいわば「ご飯のおかず」です。

白米は昔は高級品でそれだけでごちそうでしたが、

やはり白米だけでは食べにくいと考えられたのか、

「塩と味噌をおかずにご飯を食べてくださいね」

という意味で添えられます。

地域によっては本当におかずをお供えする所もあるようです。

 

枕団子にも諸説ありますが、

「冥土の旅路の途中で食べるお弁当」や

「お釈迦様が亡くなられた時にお団子がお供えされたから」など、

仏教を由来とする説が多いようです。

多くの神仏習合の事例と同じく、

日本古来の風習と仏教の考えが混じって白木膳という

一つのお供えの形になったのではないかと思われます。

 

 

《白木膳は最後どうする?》

お供えした白木膳のご飯や団子を最後どうするか?というのも

かなり地域差があるようです。

一般的には葬儀が終わり、「火葬場へ出棺する前にお棺に入れる」

というのがよく見られます。

この時に故人が使っていた茶碗を割ることもあります。

 

浜北セレモニーホール浜昇殿が主に利用している浜北斎場(火葬場)では、

葬儀が終わった後、お棺には入れず火葬場にもそのまま白木膳を持っていき

お骨上げまでお供えします。

そして火葬終了後もそのまま持って帰ってきます。

ご飯・お団子は故人様へのお供えとしてそのままご自宅まで持ち帰るか、

もしくはもったいないですが、処分します。

 

 

「故人に食事を供える」というのは宗教儀礼でもありますが、

それ以上に弔いの儀式の一つとしてかなり根源的なものがあるようです。

そのために全国で名前や中身が異なるにしても共通して今まで続く風習であると思います。

 

ご葬儀の風習全般に言える事ではありますが、

「自分のところと違う」「以前に葬儀に参列した時と違う」ということは

葬儀の場では頻繁に起こります。

多少ディテールが異なっていても、故人をしっかりと送りたいという想いの元

それぞれの場所で育まれたものですので、大切に継承していきたいと思います。

 

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※葬儀の風習・作法などは地域により異なることがあります。
ここでは、基本的に静岡県西部・遠州地方の作法に則り解説しています。
また宗教者によっても異なる場合があります。

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